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ハーマン・メルヴィル「ピエール」の海外アマゾン評価レビューの和訳

2012/02/02
海外アマゾンレビュー
ピエール
ハーマン メルヴィル
国書刊行会


以前レオス・カラックスがポーラXとして映画化した、「白鯨」の怪物作家メルヴィルのあまりにも異様で難解な作品。これほど人に勧められない本は珍しいですが、なぜか猛烈に惹かれてしまいます。個人的に海外ではどう読まれているか知りたかったのでご紹介します。あらすじはこちら。

以下ネタバレが含まれますので、ご注意下さい。
現時点で米アマゾンは総17レビューで星平均4で、英アマゾンは総2レビューで星平均4.5です。

44 人中、 41 人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
・★★★★★「不道徳で奇怪であり、異彩を放つ
ピエールは恐らく史上最も奇っ怪な小説だ。 控えめに言っても異様であるが、その過剰さは異彩を放っている。少なくともこの本は、近親相姦や父殺しや精神病などを探求しているという点で、戦前のアメリカ社会全体の神話を解体する、メルヴィルの主要な小説の一つである。メルヴィル自身、これが人気作になると信じていたとは到底思えない。なぜならこの本はアメリカで物を書くということの、オリジナリティーを生み出すことの、そして人に頼らずに生きていくことの不可能さを表現しているからだ。でもご注意を。これは心臓の弱い方には向いていない。この本は難解で、容赦無く難易度は高いが、それだけの価値はある。


42人中、 36人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
・★★★★★「忘れがたい胸騒ぎ
メルヴィルの「ピエール」を読んだのは大学院時代の80年代前半で、その後ずっと私の内部に突き刺さっている。

私はこの理解しがたい不運な傑作を、彼がどう思っていたのかが気になる。メルヴィル以前の他の作家で、人間心理とセクシュアリティのテーマを掘り下げる者はいなかった。おそらく古代ヨーロッパの異端的神秘主義者を除いては。「ピエール」は、人間の精神や内部の感知しにくい狭い領域にある暗黒面を見事に照らしだし、芸術家ぶらずに、エゴを犠牲にする誠実さと勇気を十分に持ち合わせている。

メルヴィルは「ピエール」を彼の最も重要な作品(偉大なアメリカの小説と言われている「白鯨」の後に相応しい小説)と考えていた。「ピエール」のほうが「白鯨」より感動的で、悲劇的だと私は思う。エイハブは取りつかれているし、その強迫観念と知性が混ざり合って彼を混乱させ、彼の衝動は明らかに一方向的だ。しかしピエールは表面上の現実を本能的に信用せず、人類のどす黒い腹部から発する目に見えない欲望に引きずり込まれていく。エイハブは復讐を望み、ピエールは成就を望む。

私のような内陸の人間にとって、「ピエール」はすっと入り込める。「白鯨」のように全ページにおいて言及される海事用語の膨大な羅列に尻込みする必要もない。メルヴィルは技術的に、詩人というよりもストーリーテラーや小説家であった。紛れもない詩があちこちにあるが。

どうかこの本を受けとめて欲しい。この本を書く勇気を持った偉大な人物の心意気を受けとめて欲しい。


22人中、 18人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
・★★★★★「アメリカンハートブレイク
「ピエール」はダメな本の特徴が全部ある。平坦な登場人物、過度な文章、恥ずかしいメロドラマ。ならどこらへんが傑作なのか?メルヴィルはこの作品に自分のすべてをぶち込んだのだ。絶望、宗教的疑念、人の心理について彼が理解したことなどを。それもごく一般的な話や文体や登場人物などを、熱意を込めて古風に装飾してあるのだ。母親の息子や夫への執心に関する分析と、メルヴィルの物を書く過程の苦しみの二点は私にとって白眉だった。
ビート世代は「ピエール」を愛していた。彼らは自分の目指すべきアートの見本として、また、品の良さなど行動力の二の次なんてところを参考にしてたんだ、きっと。この小説は当時、致命的な失敗作だったが、150年後のランキングで何位か見てみなよ。メルヴィルがどこかで見てることを願う。



ビート世代が好んでいたとは知りませんでした。確かに使われれなくなった教会に画家や音楽家などの芸術家たちが集まって住みついてますし、時代がかった文章とは違って話の内容は至って現代的です。でも恐ろしく難解なのでランキングは現代でもかなり低いです。

6 人中、 6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
・★★★★「確かに多義的だ」(ロンドン)
まず警告しなければならない。 この本は字が小さくて人によっては読みにくいかもしれない。さらに、ピエールは決して主流の人気作品のようなものではない。だから極力避けたいと思うかもしれない。メルヴィルは死んだと同時にほぼ忘れ去られた。そして1920年代の再評価をきっかけに彼の作品に対する新たな関心が生まれたが、それ以前からこの小説の根っからのファンは支持していた。

これが最初に出版されたときは評論家によって酷評され、おそらく今日の多くの人にとってもそうであろうが、欠点はあっても読めないものではなく、非常に面白いのだ。メルヴィルはお金が必要で、そのために感傷的な小説(18世紀以来ずっと大衆にとても人気のあったジャンル)を書くことを考えた。しかしメルヴィルは、自分が人気作品を書けるようなタイプでは全くないとすぐに悟りはしたが、彼の好んで描くものやその秀でた文章は大衆が求め熱狂するようなものではなかった。だからこの本は寄せ集めの感がある。この本全体に通底しているテーマは近親相姦である。実際に登場人物の間にあったと具体的に表現されてはいないが。 (※あらすじ略)

その後ピエールは作家としてのトラブルに巻き込まれる。出版者側が彼の作品の出来に騙されたと感じていると彼に伝えるとき、実際にこの小説を出したときの出版者側が、メルヴィルに対して感じていたことが皮肉にも我々に伝わるのだ。

証明するものは何もないが、彼の兄妹であるとイザベルに告げられ、彼は彼女と駆け落ちをする。この事実はひどく馬鹿げていると感じるが、この本は非常に人を引きつけるものがあるので本を閉じることが難しい。これが書かれたときの問題として、メルヴィルがより従来の物語スタイルから現代風に変わっていったということである。当時から評価はされていないが、これは良い小説だ。 白鯨ほど偉大ではないけれど。少し奇妙でちょっと変わったものが好きなら、ぜひともこれを読んでみてはどうだろう。だが1852年当時でさえ、この本の中で使われている言葉はかなり古風なのでご注意あれ。



博覧強記のメルヴィルがメロドラマを書くとこうなってしまった。本当に人におすすめ出来ないのですが、兎にも角にも惹かれてしまうのです。当然全く受け付けない人もいます。


40人中、 9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
・★「なぜ、これほど厄介なんだ?
白鯨の後に出版されたメルヴィルの今作は、彼の9冊の小説の中でも間違いなく最悪の出来だ。「白鯨」や「詐欺師」のような自作品に説得力を持たすために学んだ数々の作品(シェイクスピア、ウェルギリウス、ホメロス、聖書)の影響が、この内容以上に形式と文体の節々に見て取れる。

たびだび使い古された筋書きは読んでも何の見返りもなく、只々陰惨で気が滅入る。たぶんメルヴィルはこの本を書くことで、個人的に取り憑いていた亡霊を供養したのだ。それが目的なら、一般の人にこの本を読ませないように、完成した時点でこの原稿を破棄すべきだった。

いかなる場合においてもこの本は読むな。メルヴィル作品の聖典として、この本を正当化してこの存在を守ろうとするどんな学者も信じるな。教師がこの本の全部または一部、またはどんなレベルにおいてでも、これを読むことを強要するのなら、すぐにちゃんとした医療機関に連絡しろ。その先生は助けが必要だ。

これを一語読むより、他の8つの小説のうちのどれかを読んだほうが、それか白鯨を20回再度したほうがよっぽど役に立つはずだ。


22人中、 3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
・★ 「メルヴィルの迷走
主人公ピエールは、裕福で快適な生活を送る19世紀初頭のアメリカ人だ。彼は本の初めで自分の母親を妹なんて呼んでて、気持ち悪い強烈な感情を抱いている。過度に劇的で、無理に作り上げたような感じがするし、かなりの重大な事実や出来事が何の予兆もなく突然発生したりする。
何のリスクも犯さない平凡な作家を褒める評論家をこき下ろす章はちょっとウケる。メルヴィルは何とかしてピエールをシェークスピアのハムレットのようにしたかったんだよ。だが哀しいかな、ピエールの人物造形はあまりにも平坦で浅い。メルヴィルの哲学以外は、この小説で真剣に読む価値のある箇所はない。少しのページをパラパラめくってみるだけで多くの問題がわかる。メルヴィルの文才の本当の価値は、"白鯨"や"代書人バートルビー"にある。

コメ1
お前は間抜けだ。

コメ2
メルヴィルの作品のほとんどが解読不能のゴミだ(全てのメルヴィル信者だってそう自覚してるとは思うけどね)。俺も唯一"バートルビー"と"白鯨"を勧めるね(この作家に非常に関心があればだけど)。

幽霊船 他1篇 (岩波文庫 赤 308-5)



コメ3
私は必ずしもメルヴィルのどれもがゴミだとは思わない。彼はエキセントリックだし、素材をコントロールするというよりも、しばしコントロールされがちだ。ピエールに関してはあなたと一緒。主流と言われるアメリカの作家の中で一番最悪で無軌道な小説だと思う。

コメ4
偉大な精神は、常に凡庸な人々からの反発にあってきた -- アルバート・アインシュタイン



私も代書人バートルビーはお勧めです。シュールなコントみたいで面白いですよ。

23人中、 20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
・★★★★★「ピエールは傑作どころの話じゃない
「白鯨」直後に書かれた作品「ピエール」は、「メルヴィルを破滅させた本」と言われている。生前も彼の小説はあまり評価されず、その間失業していたり、税関職員として働いたりして生涯を過ごした。しかし20世紀末に、新世代の読者や批評家が彼を再発見したのである。そして今日の彼の評価は、アメリカ人作家の中でも最前列にある。

「ピエール」は見事に抑制されながら、全人類の心の奥にある本質的動機を探求している。タイトル(Pierre: Or the Ambiguities)にある曖昧さとは、それは漠然としているという意味ではなく、多義的であるという意味である。トマスハーディのようにメルヴィルは田舎の生活を描く達人だ。そしてこの小説のなかに地方対都市の対立がある。

人間の心の最奥の行動理由を捜し求める点で、この小説はフロイト的だ。人生のある時点の我々と同様、ピエールは人として憧れていた父親にも欠点があると知り、彼の価値観は長い間行方不明の姉の一言で揺らいでしまう。メルヴィルは、”我々は安全という名のカミソリの刃の上を歩いている”と指摘する。安全は我々に喜びをもたらす最上の塔であり、葉っぱが散ったり、たまたまある声を聞き入れたり、鋭い羽で小さな文字が刻まれた一片の紙切れを受け取るような、予測できない些細な出来事の上で成り立っている。

メルヴィルはピエールを幻想から目覚めさせる手助けはしないが、彼の母の性格を"電気的洞察力"でもって理解する。彼女がいかに教養によって培われたか、また彼への愛情がいかに絶対的であるかを知る。しかし基本的には彼の上辺だけの美しさと従順な振る舞いはそのままだ。文化的繊細さ(ピエール)と、天然の正直さ(イザベル)を対比しながら、メルヴィルは生得的なものとは何かを問う。

この小説は"ロミオとジュリエット"に匹敵するほどの結末を迎える。多義性とは何なのかは結末でも解明されない。我々は生きる上でみな矛盾を抱えているし、誰もそれを解消できない。天才メルヴィルもそのことは理解している。彼は実存の呪縛を解きほぐそうとするピエールの魂を深く掘り下げていく。我々はピエールと自分自身ついて多くを学び、時にその自分が破滅の原因になってしまうことを知る。己れの宿命について学び、その運命がほぼ変えられない事を知る。人生の選択について学び、ほんの些細な出来事が我々の進む道をねじ曲げていることを知る。

モビー・ディックと同様、ピエールはメルヴィルであり、これを読めと大声で叫んでいる。「白鯨」のように「ピエール」は代々読み継がれるものではなかった。だがきっと現代はこの本を受けとめることができるだろうし、メルヴィル以外ではありえない豊穣な体験を分かち合うことが出来るだろう。



メルヴィルはこの作品で、持てる知識と技術の全てを注ぎ、小説の可能性を極限にまで広げようとしていたのではないでしょうか。個人的に人の価値は何をなしたかより、何をなそうとしたのかにあると思います。たとえ歪な形であろうとその試みは偉大であり、とんでもない小説であるのは確かです。

以上です、ではまた。

ポーラX [DVD]
アミューズ・ビデオ (2000-04-28)


Pierre: or, The Ambiguities (Penguin Classics)
Herman Melville
Penguin Classics
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