ヘルマン・ヘッセ「車輪の下」の英米アマゾン評価レビューの和訳






車輪の下 (新潮文庫)
ヘルマン ヘッセ
新潮社


ノーベル賞作家ヘッセの学生時代の自伝的小説。本国ドイツよりも日本の方がよく読まれているそうです。勉強や受験、教師や学校規則の厳しさに苦しめられた人が沢山いるからでしょうか。でも英米の方はまた違った印象を抱いているのかもしれません。では覗いてみましょう。

ネタバレが含まれますので、未読の方はご注意下さい。 米アマゾンは現時点で総30レビューで、星平均4.3です。

・★★★★★「戒めのメッセージ」(バイオリンを習う学生:シアトル)
僕はこの本を最適のタイミングで読むことができなかった。大学へ"急行"したい多くのアメリカの高校生のように、勉強のしすぎだったと感じている。自然や良い本や何かを楽しむ余裕も時間もなかった。僕の生活は学校が全てで、それ以外は何もない感じだった。

僕は気まぐれでこの本を手に取った。 "車輪の下"、または"Unterm Rad"(原題)は、優秀な若者(神童の)の物語で、進歩や成長がみられなくなった彼は、知らず知らずに見限っていく人たちによって、死へと追い詰められる。

僕はハンスのように極端に何かを経験したことはないけど、この本を読んで、自分がしていたことの、まさにその理由を自問せずにはいられなかった。なぜ僕は高校で死ぬ気で勉強していたのか?何を学んでいたのか? 人間として成長していたのか?

この本でヘッセは、物語はこんなにもシンプルで、詩的になりえるのかと教えてくれて素晴らしい。実に、読むことの喜びがある。何度も何度も読み返すことができる。だから読もうとする人は、この本を楽しんで。そして義務教育の価値やいろんな学習方法を探りながら、多くの午後を過ごしてみては。技術的な部分は、”教えることは破壊行為”に詳しくあるので、確認してみては。


・★★★★「青春の没落」(ミシガン州)
車輪の下は、若きハンス・ギーベンラートの悲劇的な物語だ。ハンスはドイツのとてもちっぽけな村出身の、早熟の天才青年で、そこは住民たちの豊富な知性などでなく、彼らの謹厳実直な性格で知られている労働者階級の町である。ハンスはそこで例外的な存在だ。彼は仲間よりずっとはるかに賢く、そのことを彼自身も自覚している。

ハンスは学術や勉強を続けるため、ドイツの修道院に入学を許可されたので気持ちは晴れやかだ。それはアメリカの学生がプリンストンかスタンフォードに入学するのと同じくらい、この学校には権威がある。我々は若きハンスとなって、この旅を始める。未来への希望に満ち溢れ、多少の傲慢さも合わせ持ちながら。

いくつかの点で、この本はアンチ「ライ麦畑で捕まえて」といえる。単なる平凡とは対照的の、何か価値あるものとして教育を称賛するどころか、ヘッセの教育システムへの痛烈な批判がある。本の核心は、次の一節にある:

”校長はたった一人の天才より、沢山の愚か者がいるほうを好む。そのことを客観的に考えてみれば、当然彼が正しい。彼の仕事は、とてつもないな知識人ではなく、ラテン語や数学がよくできる、落ち着いて礼儀正しい人々を輩出することだ。”

ヘッセはここで明らかに、ずば抜けて才気あふれる人の上に、実利教育を押し付けるドイツの教育システムをほぼ敵視している。本の残りの大部分が、この一節の考えを中心に展開する。

この本全体の雰囲気と文体は、非常にトーマス・マンを思い出す。 思春期から成人へと移り変わるテーマは、マンの作品にも存在する。まあ偶然だけれど、彼らは両方ともドイツの作家ということもあって、マンとヘッセの本は私の本棚で隣り合って並んでいる。私はこの小説を読んだ後、この並びはすごくぴったりだと気づいた。マンとヘッセはまさに友人だったことを知って、彼らは互いの作品から影響しあっていたのは明白だから。

この本は全く、特に大学に行こうと思っている将来有望な高校生にお勧めしたい。これは深刻な学生が直面する、最も恐ろしい将来の一つを提示する。落第して、ブルーカラーの労働環境に落ちぶれることが。もちろん、どんな職業でも真面目に働くことは立派である。しかし我々は同時に、ショーペンハウアーのエッセイ「天才について」の末尾の部分を思い出す:

"気高く、稀にみる精神を天から授かった者は、多くの一般人向きの、単に有益なだけの仕事へ無理に参加を強いられる。彼は、最も美しい絵が描かれた貴重な花瓶のようなもので、天才と要領のよい人を比較することは、ダイヤモンドとレンガを比較するようなものだ。"(アルトゥール・ショーペンハウアー、知性について)

ショーペンハウアーの二分法の中心に巻き込まれた私たちにとって、その前者を目指そうとしても、結局は後者に成り下がっていくこのことが、最大の重圧になる。これは偉大になろうと努力しても、あっという間に脱落する人すべてにとって、慰めとカタルシス両面の効果がある小説だ(私がそうだった!)。よくよく考えてみると、ほとんどの人が、車輪の下で圧し潰されているのではないか。


・★★★★★「周期としての"車輪"を考える。今は1906年と同じだし、本当に2006年?」(ウェストチェスター)
私は教育者なので、ちょうど才能ある生徒二人にこの小説を読んでもらい、複数の視点から読み取ることができて大変満足している。私は裕福なカトリックの郊外の高校での、激しいプレッシャーと、人より抜きん出なければならないという私自身の経験を、再読しながら思い出した。しかし教師として、残念ながら退屈な論理学と言語学は、いま必要とされている創造性や、独立心と誠実さの養成に取って代わりつつあるので、現代の学生に向けて安易で、取り返しのつかない基準を作ることが、どれほど危険かも承知している。

1900年代初頭の第一次世界大戦前のドイツを舞台に、現代アメリカの状況と比較すると、それはまた驚くべきことが読み取れる。この不朽のテーマは、驚くほど同じままだ。精神的発見よりも社会的地位、本質的で意味あるものよりも肩書きやテストの点、過程よりも結果が評価される現実。人は訪ねるに違いない、我々は20世紀初頭のドイツと、同じ方向に向かっているのか?

どれだけ多くのハンスが、己の人生を無駄にするのだろうか? 、天才を窒息させる教育制度を、いったい何度作れば気がすむのだろうか? 現代の競争社会で、どれほどの多くの偉大な魂が失われているかに驚くだろう。

この古典は、教師と生徒で話しあう議題にうってつけだ。残念だが家族や名誉、友情やアート技術などよりも、高い全国統一試験の結果と社会的地位を評価する世界で、優秀であろうと努力して、それでもまだ正気と自我を持ちこたえようと奮闘する学生には特に。

理想と現実の対比が、シンプルな生活と複雑な思春期のコントラストが、まことに美しい。



ハンスが背負う光と影の明暗のバランスが絶妙です。微妙な感情や感覚を、自然や風景に重ねあわせて見事に表現しています。

・★★★★★「書かれた当時とおなじく、今日でも新鮮な教訓」(ニューヨーク)
私はこの若き日のヘッセの小説で、彼の偉大な作家としての素質がすぐにわかった。彼は関連を伏せながら、身の周りの矛盾を簡潔に示す名人だ。彼の美しい自然描写は素晴らしい。彼は、何の疑いも持たず、ただ期待されたことをしている人々が、結果的に被る重い代償が何なのかを把握していた。歴史的意義もここにある。

我たちがこの本を読むときは既に、後のドイツで起こったことを熟知している。またそれ以外でも、若者を決められた成果に向けて、その首に巻かれた手綱を引っ張ろうとする、我がアメリカ文化の強烈な側面も見てとれる。この本は、隅々まで思考の糧になり、ほぼ一世紀前に書かれた当時と同じくらいに、今日でも新鮮だ。お勧めです。


・★★★★「最高傑作ではないが、よく出来た小説」(ノースカロライナ州)
これは教育の欠陥についての物語で、才能ある子供たちを、とても厳格な教育で押し潰してくさまを描いている。彼らは知的能力を最大限に引き出そうとして、自身の魂と精神の叫び声を無視するようになる。自分の脳に無理やりに詰め込む過程で、彼らは学ぶ意欲を損ない、自分たちの人生さえも損なうことに....

この物語の中でヘッセは、主人公とは全く反対の人物を提示する。ハンス(主人公)は、彼と違って学術よりも詩と魂に関心のあるハイルナーと出会う。彼ら正反対の登場人物が互いに惹かれあい、彼らは親友になる。

全体的に非常に良い本であり、私は全ヘッセファンにお勧めする。だけど、もし以前に一度もヘッセを読んだことがないのなら、この本から始めないほうがいい。



いえ、この本から始めたほうがいいと思います。デミアン、ガラス玉遊戯やシッダールタなど傑作は沢山ありますが、後の作品はちょっと難解に感じるかも知れません。この本は日本人にとって普遍的なテーマを扱っているので、とっつきやすいのではないかと思います。若いときはハンスやハイルナーに共感し、年を重ねて読むとやはり学校教育の問題点に目が行きます。自然あふれる川や森での散歩、職人気質、お祝い事、自作した釣り道具へのこだわりなど、その他日本人好みの要素が沢山あります(BLっぽい部分もあるので、同人誌などもすでに出されていたりするんでしょうかね?)。


英アマゾンは現時点で総3レビューで、星平均5つです(ちょっと少なすぎですよね、ビックリ)。

・★★★★★「警告:BENEATH THE WHEEL(※英語版のタイトル)= THE PRODIGY
別のレビューで最後に警告しているけど、もしあなたが"THE PRODIGY"を持っているなら、これを買わないように。ただタイトルが違うだけで同じ本だから。"車輪の下"から表題通りの内容が思い浮ぶけど、それだけじゃない。"神童(prodigy)"にも関連しているけど。"BENEATH THE WHEEL"の方が、"UNTERM RAD"のドイツ語の原題にずっと意味は近いし、簡単に繋がりもわかるしね。

Beneath the Wheel 車輪の下 【講談社英語文庫】



講談社英語文庫は確かにタイトルは ”THE PRODIGY” ですね。

・★★★★★「車輪の下の、神童たち」(ワトフォード)
この本はあらゆる学校や大学の指導者に必読。 ヘッセは自身が神学校へ入学し、過ごした体験を描いている。この本は特に、狭量な校則第一の重圧に耐え切れず、森の中で亡くなった彼のクラスメートの死が影響している。 この本は閉鎖的・教条的施設などで学んだことのある人にとってはカタルシスになるが、一方で学校やその他の施設での、制度作りやその管理に反映させなければならない。



以前読んだときは鬱屈した印象しかなかったんですが、光文社の新訳はすごく読みやすくなって、思春期特有の感性と自然の鮮やかで瑞々しい描写など、読後も明るい印象が残ります。翻訳はシュリンクの「朗読者」を訳した方です。こう聞くと手に取ってみたい方もいらっしゃるのでは。

朗読者 (新潮文庫)



以上です、ではまた。


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